つづきは露西亜人形

監督(前)と主人公でアシュラの舞

続編した!スパニッシュ・アパートメントの五年後の世界を爆笑した!
フランスで一番小粋な監督セドリック・クラピッシュの新作『ロシアン・ドールズ』を鑑賞。
このヘタレでその場しのぎの男が、気の抜けた演出で笑いを誘う凄く面白い映画。
あんまり話題になってないけど、是非とも見るべき一作。
クラピッシュ監督は、何気ない事を淡々と撮りながらも
そこに笑いの要素を振り掛けるという、物凄い上質のコミックを読んでいる感じの映画を撮るのが上手い。
今回で、上手い!と思ったシーンは、毎度の事ながらオープニング。
あの沢山の画面で構成する演出は見事だな。
それから、電話をかけている時のカメラアングル。
あの演出は今後色んなTVドラマでパクってきそうだな。
マンションのベランダから、道路を歩いている人物への電話。この撮り方は上手かった。
さらに、話している相手を画面の左右から割り込ましたり、空に出現させたり。
あと、欧州の携帯電話はアンテナが付いていない機種が多かった。
演出面での笑うポイントは、ユーロスターの存在。
パッと見は、黄色い新幹線。イギリスとフランスを地下で結ぶ超特急。
この映画では、フランスとイギリスをしょっちゅう往復する訳ですが
その時の移動手段として、ユーロスターを利用。
トンネルに入っていく電車が映ったらな、次の場面はイギリス。
トンネルから出てくる電車が映ったなら、次の場面はフランス。
この何気ない使い回しのシーンが出てくる度に笑いがこみ上げてきた。
空港利用だと、飛行機から降りてくるシーンでは手ぶらになるけど
電車利用だと、ホームに降り立つ瞬間から山ほどの荷物を持って降りるので、それがまた滑稽に。
こういったさり気ない笑いを散りばめさせたら、この監督は最高の演出を見せてくれる。
笑いが好きな方は、この映画を見逃すな!
と言っても、ロシアン・ドールズはコメディ映画とは違うけどね。
最悪の不幸は、上質のコメディの要素を含んでいる。
勢い任せの主人公グザヴィエの行動原理は、まさしくコメディ。
それでも懸命に前へ進もうと空回りしている様子に、励まされる事は多いです。
こんな上質な映画が小規模公開とは寂しい…
関西では、シネカノン神戸しか上映してませんよ!近くでの公開でよかった。
うっかり見逃してしまいそうな映画なので、急いで劇場へ!


クラピッシュの映画と言えば、ナイスな邦題。
邦題を見ただけで、内容が全て判るような良いセンスで付けています。

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と、判りやすいネーミングだったのに、なぜ今回はロシアンドールズなのか?
別にロシア人形を探し求める映画ではないし
住んでいたアパートに呪いのロシア人形が送られて来て、かつての仲間を殺していく物語でもない。
映画を観るまでは、このタイトルの意味がさっぱり判りませんでしたが
ラストで主人公が語る言葉を聞いて(正確には字幕を読んで)
ハタと膝を叩きましたよ。
確かに、この映画のタイトルはロシアンドールズって名付けなければならない!
ドールズの複数形あって、ドールという単数形ではダメなんですよ。
このオチを想定しての、このタイトル。
侮りがたし!セドリック・クラピッシュ監督
この監督は、意外と落語をやってもセンスを発揮するかもしれません。
巷に生きる素人の撮り方が上手い。血の通った人間描写の天才。
舞台はヨーロッパのフランスですが、主人公の本質は、どこの国の30歳でも通用します。
この映画のタイトルとオチが気になった方は劇場で、あるいはレンタルビデオで真相をお確かめ下さい。