完全な食欲を求めて

漢字で描かれた牛

本棚の奥からトゥネガティブを発掘する事が出来ましたよ!
中身はエロ本と言うよりも、グロい悪趣味本なんですけど
その中で連載していた、阿久津勘平さんのコラムが秀逸なので
このまま埋没させるのは勿体無いので、転載したいと思います。
人間&動物愛への危険で嬉しい問題提起
牛を殺して喰う現実
 牛を食う。
 といっても、牛を丸ごとかじるわけではな
い。南アメリカあたりでは、こんな喰い方が
ある。内蔵を取り出した牛を開きにする。腹
から縦に切って、背骨を残して開く。アジの
開きと同じだ。地面に大きな穴を掘り、石を
敷き詰める。その上に牛の開きを乗せ、石を
かぶせる。その上でたき火をする。蒸し焼き
にするのだ。これは豪快な食べ方だ。あっち
の方では、牛が安い。放牧していれば、勝手
に大きくなるわけだから、手間が要らない。
むしろ解体する手間を考えると、小さな豚の
方が高くなる。実際肉屋に行けば、牛肉の方
が、豚肉よりも安いという。豚肉も高いが、
牛肉がもっと高い日本では、とてもまねする
ことができない芸当だろう。
 もっと普通の食べ方を考えよう。ビーフ
チューもいいが、ステーキもいい。分厚く
切った肉に、塩胡椒をする。それをニンニク
か何かで香り付けした油で焼く。まず強火で
両面をさっと焼く。これはうまい肉汁を、肉
の中に閉じこめてしまうためだ。後はフライ
パンを濡れ布巾で冷まして、弱火で焼く。何
度もひっくり返してはいけない。やはり肉汁
が出てしまうからだ。
 さて、ソースは何がいいか。付け合わせを
何にするか、などと考える。
 その時、その肉がどこの部位かなど、あま
り考えない。もちろん、グルメばやりの今日
では、そんなことにやたらとうるさい御仁も
いる。そんな人でも、牛の解体方法までは知
らない。
 冷蔵庫にぶら下がっている大きな肉の塊か
ら、ナイフで肉を切り出す作業くらいは、
時々TVでもやっている。冷蔵庫の天井か
ら、あんな肉が生えてくるはずない。牛肉
とはモーモー鳴く、あの牛の肉である。
 牧場で草をはんでいる牛が、TVで出てく
る姿になるには、もう一つの何かがあるはず
だ。それをここでちょっぴり案内してみよう。


 牛はたいがい、その前日にトラックで運ば
れてくる。近くであれば、当時の朝早くだ。
しかし多くは、千キロ以上も離れた産地から
の長旅だ。車を運転する人なら、高速道路を
走る、そんなトラックを見たことがあるだろ
う。荷台に横向きになって、何頭もが繋がれ
ている。
 和牛はクロ。ホルスタインなどの乳牛はシ
ロと呼ばれる。和牛でも、赤毛の奴がいる。
でもアカとはいわない。和牛はクロなのであ
る。当然和牛の方がうまい。
 だいたい、牛の半分は雌である。しかしな
ぜか、漢字で書かずにメスと書く。残る半分
は、オスかというと、そうではない。ヌキな
のだ。キンヌキ。睾丸を抜いて去勢した牛の
ことである。たまに、タマのついた奴が来
る。日本では、九十九パーセント以上、牛は
人工授精である。だから種付け用のオスは、
ほとんどいない。それでもゼロではないか
ら、たまにつれられてくる。こいつはやたら
と気が強い。まずは近寄らないにこしたこと
はない。なお、うまいのはメスである。
 係留所に降ろされた牛は、そこで水で洗わ
れ順番を待つ。自分の順番が来ると、手綱を
引かれ、中へ入っていく。そこで自分がどう
なってしまうのか、わかっているらしい牛も
少なくない。必死になって前足を踏ん張り、
その場にとどまろうとする。後ろから棒で突
いたりすれば、驚いて前に出る。それを繰り
返して、少しずつでも中へ入れる。たまにそ
れでも前に行かない牛もいる。こんな時に
は、電動のチェーン・ブロックで、手綱を
引っ張る。なにしろ1トンもの重さを持ち上
げる機械で引っ張るわけだ。手綱は牛の鼻輪
をくぐらせた上で、しっかりと頭に結ばれて
いるから、イヤでも前にでるしかない。
 次の行程は、様々な方法がある。もっとも
原始的な方法は、ハンマーで牛の頭を殴りつ
ける。ハンマーの柄は1メートルあまりの長
さだ。つるはしなどと変わらないと思えばよ
い。だが頭は普通のハンマーではない。直径
が一センチ、長さが三センチぐらいの鉄の突
起がついている。これを頭蓋骨にめり込むよ
うに殴りつける。人間でいえばちょうど額の
部分だ。牛の場合、そこは上を向いているか
ら、上から下へハンマーをたたきつける。
 少しスマートな方法は、屠殺銃というもの
を使う。拳銃のような形をしているが、ずっ
と思い。二キロくらいはあるだろう。大型の
軍用拳銃の倍以上の重さだ。銃といっても、
先から弾が飛んでいくわけではない。右記の
ハンマーの先の突起のようなものが飛び出
す。銃本体から離れるのではない。数センチ
だけ前へ突き出るだけだ。これを牛の額に当
てて引き金を引く。そうすれば、ハンマーで
殴りつけたのと同じだ。
 新しい屠殺銃もある。これは円錐形をして
いる。原理は同じだが、引き金が付いていな
い。円筒の底を額に強く押し当てると、自動
的に撃発する。引き金を省略したわけだ。押
し当ててから引き金を引くのでは、牛がその
瞬間頭を下げることがある。完全にはずした
ら、やり直せばいい。
 しかし中途半端に傷つけてしまうと、大変
なことになる。牛は暴れまくる。数百キロの
体重で、頭には硬い角がついている。まわり
の人間は皆、闘牛士の勇気を思い知らさせれ
る。いや、本当にこわい。何年もたってから
でも、夢に見るほどだ。
 新しい銃は、安全対策のため改良された。
これは古いのと同じくらいの目方がある。こ
れらの銃は、いずれも二十二口径の空砲を使
う。警察にも届けられた、れっきとした銃で
ある。
 最近では、炭酸ガスを使う方法もあるとか。
だが、詳しくは知らない。


 ハンマーで殴られるにせよ、屠殺銃で撃た
れるにせよ、そんなことされたらどんなに大
きな牛でも、ひとたまりもない。その場に倒
れてしまう。その時、横に倒れるのではなく、
前足をがくっと曲げ、前のめりに倒れる。
 しかしこれだけでは安心できないから、ワ
イヤーを額に開けられた穴に突っ込む。五ミ
リくらいの太さで、五十センチくらいの長さ
のワイヤーだ。これで、頭の中をかき回す。
ワイヤーを動かす度に、全身をけいれんさせ
る。うっかり後ろ足付近にいれば、蹴飛ばさ
れてしまう。こうなると、うずくまるくらい
では済まない。
 それから頚動脈を切る。けいれんして横倒
しになった状態の牛の喉に縦にナイフを入れ
る。手探りで頚動脈を切るわけだ。この時使
うナイフは、刃渡り十五センチあまりの直線
的なナイフだ。先がとがっており、刃はほぼ
三角形をしている。ナイフはこれを含めて、
三種類ある。地域によって呼称は違うとのこ
とだ。
 ナイフはどれも、よく切れる。どれくらい
切れるかといえば、何とか髭が剃れるくらい
だ。理髪店で髭を切る剃刀は、刃を砥石に密
着させて研ぐ。それで研げるような形状をし
ているのだ。ナイフは違う。普通の包丁と同
じ形状だ。刃をつける角度は、人間がつけて
やらねばならない。だから砥石に接する面が
平らになりにくい。素人がこれをやると、刃
先を丸くしてしまうだけだ。
 理髪店の剃刀の、一歩手前の切れ味。ここ
で使われるナイフは、それほどよく切れる。
切れなくては仕事にならない。手首や腕に負
担がかかり、すぐに疲れてしまう。それ以上
に、余計な力を使って切るので、とても危険
だ。だから、ナイフはどれもよく切れる。
 ハンマーなどで頭に穴を開けたときには、
それほどの出血はない。だが頚動脈を切る
と、血が吹き出す。絵の具のような真っ赤な
血だ。計ったことはないが、おそらくバケツ
に数杯分はあるだろうか。
 次に後ろ足を二本束ねて、鎖でくくり、チ
ェーンブロックで引き上げる。牛の頭まで
完全に宙に浮くまで、引っ張り上げる。余
分な血液を体外に出してしまうわけだ。こ
れを放血という。
 ちなみにアメリカでは、このような放血を
行わない。だからアメリカで喰うステーキ
は、どんなによく焼いても、地が滴る。
 しばらくしたら、牛を解体する場所に移動
する。こうした施設には、天井にレールがつ
いている。ちょうどぶら下がり型のモノレー
ルのような仕組みのレールだ。これに牛をぶ
ら下げ、手で押して移動する。
 下に降ろして、仰向けにする。前足を鎖で
固定する。ちょうど万歳をさせる格好だ。後
ろ足も同じようにして開いて固定する。まず
頭の皮を剥ぎ、頭を切り離す。頭にも肉は付
いているし、何よりも舌がある。焼き肉屋で
タンと呼ばれる奴だ。
 これもアメリカの話だが、「開拓時代」の
乱獲で、バッファローが絶滅寸前までになっ
てしまった。インディアン(アメリカ大陸の
先住民を、インド人と呼ぶのはあそこをイン
ド大陸と勘違いしたコロンブスのせいになっ
ているが、そろそろこんな呼び方はやめたい
ものだ)は、バッファローを狩っても、その
すべてを生活に利用した。だから彼らだけが
狩猟をしている間は。バッファローが絶滅す
ることなど考えられなかった。ところが白人
は次々と狩り、斃したバッファローの舌だけ
を持ち帰ったという。切り取りやすかったと
いうのもあるだろうが、そのうまさを知って
いたのだろう。


 話を戻そう。
 次は、胴体の皮を剥ぐ。まず縦にまっすぐ
ナイフを入れる。喉元から肛門まで一直線
に。皮だけを切るのだ。次に左の前足から右
の前足にかけて切る。上から見れば、十字架
の形に線が入る。続いて後ろ足。これでキの
字の形になる。
 刃先が丸くなったナイフで、皮をむく。こ
の作業は、結構難しい。皮も商品だから、傷
つけてはいけない。まして反対側は肉だ。こ
れには傷つけるわけにはいかない。
 四本の足の先だけ残して皮を剥ぎ、今度は
腹を立てに裂く。これも難しい。何しろ内臓
……胃や腸には、中身が詰まっている。牛の
食事……といえば聞こえがいい。すでに唾液
などで発酵している。すさまじい臭いだ。う
っかり内臓を傷つけると、その場にぶちまけ
ることになる。きっと人間の手術するのと同
じことだろう。ここで出せる大きな内臓は出
しておく。腹脂や心臓、肝臓などはこの段階
で取り出される。
 それから後ろ足に金具をつける。長さが一
メートル二十センチくらいの鉄のパイプで、
両端が二股に分かれている。無理矢理後ろ足
を開くためのような金具だ。さらに後ろ足に
鎖をつけ、チェーンブロックで引き上げる。
この引き上げるときに、残った内臓を取り出
す。この内臓は、重い。とても一人で持ち上
げられないので、引きずっていく。そして、
しっぽも切り取られ、最後までつながってい
た皮も剥がされる。
 肉と骨と脂の塊が残るが、かろうじて牛の
原形をとどめている。
 もっとも、腎臓だけは取り除かれない。腎
臓は、他の臓器のように露出していない。分
厚い脂肪でくるまれている。腎臓自体は一つ
が大人の握り拳くらいの大きさだ。しかしそ
れを包む脂肪は、多いもので五キロぐらいあ
る。
 この脂肪は良質だ。スーパーの肉のコーナ
ーに小さなビニール袋に入った、さいころ
の脂肪がおいてある。あの脂に使う。ほとん
どの場合、肉を買うとただでもらえる。上物
の牛(少なくとも和牛で、うまくすると雌牛
のそれ)の脂だ。安い牛肉でも、あの脂を使
うだけでうまくなる。だからあの脂は、多い
めに持ってきて、保存しておこう。
 だから腎臓は肉にくっつていく。最後に、
牛の体を巨大な電動ノコギリで縦に真っ二つ
に切り分ける。背骨を中心に左右に分けるの
だ。むろん背骨もその真ん中から切られてし
まう。ここまでくると、肉屋の冷蔵庫にぶら
下がっている姿となる。これを枝肉という。


 食べる話に戻そう。
 牛の内臓は、ほとんど食べられる。例外は、
肺や食道だ。これらでも、犬の餌にはなる。だ
から、豚の飼料くらいにはなるだろう。その
他の内臓……胃や腸、心臓や肝臓は食べられ
る。調理方法も様々で、煮たり、焼いたり
……ものによっては、生のまま食べられる。生
の方がうまかったり、生でなくては食べら
れないものさえある。生で食べるものは、
心臓や肝臓、胃の一部がよく知られている。意
外と知られていないが、脊髄と血も生でいい。
 脊髄は、ちょうど太めのうどんに似ている。
解体作業の最後の背引きで、背骨を切る。す
ると中から、脊髄が出てくる。これを水で洗
って、そのまま食べてしまうのである。血も
飲めるのだから、洗う必要もないとも思える。
しかし、よく洗わないと、背骨の破片がつい
ている。これで口の中を切ったりする。だか
らよく洗う。食べる姿は、見た目には不気味
だが、味の方は絶品である。
 血は、反対に解体の最初の放血作業の時に
採る。こちらの味は、しょっぱい牛乳と表現
すればいいだろう。そこいらに売っている成
分調整した牛乳より、はるかにコクがある。
牛乳好きの人は、一度試してみるといいだろ
う。きっと病みつきになる。
 脊髄も、血も、これを生で食すためには、
牛を解体する現場に行かなくてはならない。
他にも、現場ならではのものがある。たとえ
ば心臓。「さっきまで生きていた」なんても
のではない。ちゃんとピクピク動いている。
文字通り、生のうまさである。これを食べる
と、焼き肉屋の刺身は食えない。
 もちろん、どんなものでも新しければいい
というものではない。牛肉を焼いて食うなら、
腐る寸前がいいという。実際ステーキの高級
店では、かびの生えた古い肉を冷蔵庫から出
してくる。これは肉に限らず、どんな食品に
もいえることだが、その素材にあった調理方
法がある。その中に、生で食うものがあるわ
けだ。生で食べるときには、新鮮なものがい
い。新鮮であればあるほどうまい。
 もっとも、牛の生き血を飲んだり、脊髄を
生で食べるのが嫌な人もいるだろう。「あん
なおいしいものを知らないなんて」と残念に
思う他はない。何をどのように食べるかは、
一つの文化の問題だ。それは固定されていな
い。そもそも日本人は、わずか三十年くらい
前まで、牛肉の食べ方を知らなかった。全く
知らなかったわけではないが、調理方法を基
本的に知らない。とにかく肉は、煮て食うも
のだと思っていた。肉がたくさんあれば、す
き焼きにする。少ししかなければカレーに入
れる。これくらいである。
 同じ牛の肉でも、その部位によって最適の
調理方法がある。たとえば横隔膜の筋肉。こ
れを煮ても、ぱさついてまずいだけだ。だか
ら、牛肉は煮て食べると思いこまれていた時
代には、誰も見向きもしなかった。朝鮮半島
では、肉を焼いて食う習慣があったから、そ
の文化圏の人は、横隔膜の肉のうまさを知っ
ていた。彼らが買いにこなければ、本当に捨
てていた時代があった。
 ところがこの肉を、今ではみんな喜んで食
う。焼き肉屋にある「サガリ」がそれだ。う
まいことは、ほとんどの人が知っている。し
かも安い。これには理由がある。以前は、誰
も食べなかったから安かったのだが、今では
それなりの需要がある。それでも安いのは、
安く輸入できるからだ。
 最近輸入肉を、よく見かける。国産の肉よ
りはるかに安い。牛肉の輸入が自由化された
おかげだ。もっともこれでも、バカ高い関税
がかけれれている。それでも安いのだ。とこ
ろがこのサガリは、法律上肉ではない。なぜ
か、内臓として分類されている。だから、税
金をかけられてもあれほど安い牛肉より、も
っと安く輸入することができる。本当は、安
いのではなく、もっと安く食えるのだ。
 ちなみにこのサガリも、生で食うとうまい。
刺身で食えるほど新しいサガリが、大量に流
通できるようになったら、きっと読者の口に
も入るだろう。そうなっても食えないとした
ら、「もったいない」としかいいようがない。
 かつては日本では、牛の腸を食べることは、
一つのタブーになっているのかと思われる時
期があった。どういうわけか、ほとんどの人
がたべようとしなかった。それが今では、モ
ツ煮と称して誰でも食べる。うまければそれ
でいい。食い物とはそういうものだ。


 アメリカのシカゴに、大きな食肉工場があ
る。なぜか観光コースになっていて、牛が解
体される作業を見学し、二階の食道で昼食を
とる。もちろん、分厚いステーキが出る。食
品製造工場へ行けば、たいだい製品を食べさ
せてくれる。小学校の時、牛乳工場へ見学に
行ったが、必ず牛乳をもらって飲んだ。パン
工場へ行ったときも同じだ。そんなものだろ
う。
 ところが日本人のツアー客は、ほとんどだ
れも食べない。この話を聞いたのはずいぶん
昔の話だ。まだ日本人向けに、このツアーを
やっているかどうか、知らない。この反応が
日本人だけなのかどうかも知らない。韓国人
ならどうだろう。仏教徒の多いタイ人ならど
うか。ほとんどわからない。ヒンドゥー教徒
の多いインド人なら、そもそもツアーに参加
しないだろうことはわかる。しかし、ほとん
ど何もわからない。わかっているのは、日本
人は、牛を食べるのが好きだが、牛を解体す
る現場を見るのは、とても嫌いらしいという
ことくらいだ。
 その日本人は、魚も好んで食べる。焼いて
も食べるし、煮ても食べる。欧米などではあ
まりなかった習慣だが、生でも食べる。煮魚
や焼き魚より、刺身が高価だが好まれる。そ
の魚の解体するのは、嫌いではないらしい。
少し前なら、家庭の主婦が魚をさばいていた。
新鮮な刺身を喰わせてくれる店では、客の目
の前でさばいてもくれる。だから魚はいいら
しい。
 牛と魚では、どこが違うのだろうか。牛は
魚より、人間に似ているからだろうか。いや
それなら、牛を食べられないはずだ。どうし
てだろうか。考え込んでしまう。
 誰か教えてくれないかなぁ。


 牛はうまい。その部位にあわせた食べ方を
すれば、どこもててもうまい。しかし牛は人
間に食べられるだけではない。
 飼料となって他の家畜のエサになる。肥料
となって植物を育てる。古くから胃腸薬、強
心剤、解熱薬、神経痛薬などにも使われ、今
も使われている。最新のバイオテクノロ
ーは、さらに新しい薬の原料としている。ニ
カワはつい三十年くらい前まで万能の接着剤
として、広く使われていた。現在も様々な工
芸品に使われる。このニカワも牛から作られ
る。皮がどれほど重宝するかは、みんなが知
っている。その他、外科手術の糸、テニスラ
ケットのガット、消火器、陶磁器、漁具……
とても思いもよらない形で生かされている。
 ライオンが獲物と共生しているように、イ
ンディアンがバッファローと共生していたよ
うに、白人じゃない道を歩きたい。


以上。吐夢書房 トゥ・ネガティブ4月号 NO.4 APRIL 1995
に掲載された阿久津勘平さんの「完全なる食欲を求めて」の最初のコラムでした。
5Pの文章を転載するのに、2時間半もかかりましたよ…
ただ移すだけなら、もうちょっと早かったのですが
当時の原稿のまま状態をお届けしようとして、文字の切り替えしを
揃えようとしたら、物凄い時間がかかってしまった。
明日からの2回目・3回目はどうしようかな?
(登録した文章を見直したら、無駄に下へ伸びて読み辛そう…)
(明日からは、普通に書いて読みやすさをアップしよう)
次回は、鯨。そして最終回は、猿と続きますので、ご期待下さい。
また、阿久津勘平さんをご存知の方からの情報もお待ちしております。
こんなエロ本でのコラムだから、偽名だと思いますが
普段は、どういった名前で何かしらの仕事をしておられるのでしょうか?
今回は牛の加工過程を書き連ねたコラムでしたが、鯨・猿の回では
かなり面白い内容となっていますので、その辺りから本業が何なのかが判る可能性があるかも…
みなさまからの情報は、コメントを残していただくか
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ところで吐夢書房が潰れたという話を聞きましたが本当なのかな?
最近、エロ本屋に行ってないので判りません…