右から左へ破裂する

耳をFuckし、脳をholicする

伊藤計劃さんの『虐殺器官』を読み終える。
これはどてらい小説だったな。お見事の一言を拍手と共に送りたい!
個人的にお気に入りなのには、登場人物名の使用頻度が非常に少ない事。
横文字のカタカナを覚えられない人間にとっては、これほど読みやすい小説はなかったです。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

先週の神戸新聞の書評にて

攻殻機動隊の世界感で、地獄の黙示録のカーツ大佐を討つべくウィラード大尉を再現した物語。

攻殻地獄の黙示録という、好きな作品の合体と見て、思わず現物を探しに本屋まで。
そして、冒頭の1Pを読んだだけでノックアウトされましたよ。

本当に恐いのは、飛び交う弾丸でも襲い来る刃でもなく
全てが終わった後の光景を見て、怖ろしいと気付かない自分の神経である事。

この心理が理解出来る人であれば、ハマる事間違いない一冊に仕上がってました。

地獄はココにある。
脳は、薬やウィルスによって変調をきする事がありますが
もっと単純でいて効率的に、脳の機能を破綻させる方法を見つけ出した男、ジョン・ポール。
彼に下された暗殺司令を実行する為に紛争地域へ潜入する戦闘員、クラヴィス・シェパード大尉。
虐殺を広めるジョンをクラヴィスは止める事が出来るのか?


小説の第5部で、企業体が国家として独立しているのを読んで『ハイブリッド・フロント』を思い出した。
軌道企業体が地球を制したハードワイヤード〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)なんかも面白かったな。
全てが行き詰った世界こそが、SFの有るべき姿なのかも知れない。
でも、虐殺器官に関しては、電脳化も義体化もない撃たれたら血の出る世界なので
その残虐さが本作の魅力でもある。
気楽で理想的な小説ではありませんが、人の業を垣間見たい人は「虐殺器官」の一読を。
作者の伊藤計劃さんは、はてなダイアリーでブログを書いています。
伊藤計劃:第弐位相 id:Projectitoh
ブログを読むと6月は大手術をしていたみたい。『ある麻薬の話
まだまだ体調は本調子じゃないのかも…
これからも元気に小説を書いてもらいたいです。