右から左へ破裂する
伊藤計劃さんの『虐殺器官』を読み終える。
これはどてらい小説だったな。お見事の一言を拍手と共に送りたい!
個人的にお気に入りなのには、登場人物名の使用頻度が非常に少ない事。
横文字のカタカナを覚えられない人間にとっては、これほど読みやすい小説はなかったです。
- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/06
- メディア: 単行本
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攻殻と地獄の黙示録という、好きな作品の合体と見て、思わず現物を探しに本屋まで。
そして、冒頭の1Pを読んだだけでノックアウトされましたよ。
本当に恐いのは、飛び交う弾丸でも襲い来る刃でもなく 全てが終わった後の光景を見て、怖ろしいと気付かない自分の神経である事。
この心理が理解出来る人であれば、ハマる事間違いない一冊に仕上がってました。
地獄はココにある。
脳は、薬やウィルスによって変調をきする事がありますが
もっと単純でいて効率的に、脳の機能を破綻させる方法を見つけ出した男、ジョン・ポール。
彼に下された暗殺司令を実行する為に紛争地域へ潜入する戦闘員、クラヴィス・シェパード大尉。
虐殺を広めるジョンをクラヴィスは止める事が出来るのか?
小説の第5部で、企業体が国家として独立しているのを読んで『ハイブリッド・フロント』を思い出した。
軌道企業体が地球を制したハードワイヤード〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)なんかも面白かったな。
全てが行き詰った世界こそが、SFの有るべき姿なのかも知れない。
でも、虐殺器官に関しては、電脳化も義体化もない撃たれたら血の出る世界なので
その残虐さが本作の魅力でもある。
気楽で理想的な小説ではありませんが、人の業を垣間見たい人は「虐殺器官」の一読を。
作者の伊藤計劃さんは、はてなダイアリーでブログを書いています。
伊藤計劃:第弐位相 id:Projectitoh
ブログを読むと6月は大手術をしていたみたい。『ある麻薬の話』
まだまだ体調は本調子じゃないのかも…
これからも元気に小説を書いてもらいたいです。