自由道は燃えているか!?「第２２話」

１カケ３コスリ


第２２話
『御手洗いトイレット作戦』
　昨年末実施された「読書をする場所」のアンケート結果が発表されました。

１位　トイレの中で　　　　　　　　４５．３％
２位　ふとんに入り眠りに付く前に　２４．５％
３位　親の遺言で本は読まない　　　１１．９％
（２００１年度・子供銀行調べ）

以上の点を踏まえると、人は時として、独りでくつろげる場所において
ゆっくりと自分の時間を過ごす事が、至福の時間となる事がある。
リラックスして、本の中の時間と空間に身をゆだね
その一日のわずかな時間を、ココとは違うドコかへと
旅立ってみるのも悪くは無い。そう、思い出の時代へ
ノスタルジアを感じる、あの世界へ


亜米利加から大西洋を横断して、英吉利は倫敦へと航海を進めるＡ級船舶
「ノスタルジア号」
　四井商事の営業マン「ヤマダ・カスケ」と、となりの客室で航海を共にする
画家志望の美術学校の学生「イリューシャ・グランセリウス」。
主人公のカスケは、ノスタルジア号爆破の犯人の疑いが掛けられ
その容疑を晴らすため、そして沈没寸前のノスタルジア号から生き残るため
自ら捜査の協力を申し出た。犯人が唯一の要求したシロモノ
「ロシアの霧」を見つける為に、船内の聞き込みを始める。


　このゲームは、いわゆる「探偵ゲーム」とは違う。
アチラコチラを歩き回り、人々から根掘り葉掘り聞きまくる事で
犯人を割り出し事件を解決する、コマンド総当り式ゲームではない。
むしろ、ゲームとしては一本道でボタンを連射しているだけで
クリア一歩手前まで来れる。ゲームらしい所は、最後の爆弾解体シーンだけ。
そんなゲームのドコに自由があるのだろうか？ゲームとしては
自分で証拠を見つけ出し、犯人の目星を付けて追い込む。
それが快感だと思う人も多いだろう。それが探偵ゲームの醍醐味。
この常識を覆してまで、クリエイターがゲームで訴えたかった事は
「会話の魅力」その一言に尽きる。
ゲームでフルボイスは、今でこそ当たり前だが、真の意味で
フルボイスの良さを伝えたのは、このゲームだろう。
声を充てているのではなく、会話を楽しんでいる様な感じを受ける。
この会話の妙が、ゲームの素晴らしさである。
小粋な会話によってゲームは進み、謎だったロシアの霧の存在が明らかになり
次第に物語は、犯人を見つけ出すより、犯人が仕組んだこの騒動の裏側に
視点は移り行き、個人よりもっと大きな存在、会社・組織・国家の思惑で
動いている事に気付く。
　保険会社の存亡、船長の威信、パリの探偵の意地がぶつかり合い
さらにイギリス、ロシアの諜報部員が船に乗り込んでいる事が判明
第三国のスパイの介入までの可能性が現われ始めた。
全編セピア色の世界で語られる、１９０７年の舞台に身も心を委ねて
ノスタルジアな気分に浸ってみては、どうだろう。
沈没寸前の船の中で、色々な思惑で動き回る人々の模様を見事に
描ききった傑作ゲーム。このゲームで言える事は、ただひとつ
一つの場所に、沢山の人間を閉じ込めるもんじゃない。

混ぜるな、危険！

ノスタルジア1907 MCD 【メガドライブ】

ＥＮＤ


注釈（難しい、旧仮名遣いの地名を改めて紹介。
亜米利加・アメリカ
英吉利　・イギリス
倫敦　　・ロンドン


以上『日刊ゲームスクウェア』　2002/02/18号より
前回までの『自由道は燃えているか!?』はコチラから読めます。


１カケ３コスリは、ヒトカケ・ミコスリ・サンポールでお馴染みのトイレ用洗剤
『KINCHOのサンポール』の事です。
冒頭のネタ振りがオチに繋がる練りに練られた一本。
むしろ、真ん中のゲームの話は無くても良いぐらいだ。
この頃はやけっぱちなので、ゲームの事を語らずに原稿を書こうと無い知恵を振り絞ってた。
それはそれとして、ネットの世界は広大なモノ。
色々彷徨っている内に、ノスタルジア1907の絵師の方のHPを発見しました。
『転企画』（うたたきかく）
HPの方は更新してない様に見えますが、掲示板の方に色んなネタ記事を紹介してくれているので
ちょくちょく訪れては、ネットの世界の広さを実感している次第です。
転企画のGALLERYでは一番下の65,000hitにノスタルジアのイラストが掲載されています。
もう一度、ノスタルジア1907が復活する日が来ないかなあ
『ノスタルジア1907のプロローグ1905』
ノスタルジアを遊んだ事がある人も、そうでない人も楽しめる日露戦争の舞台裏小説になってる！
昔パソコン版が発売された時に、こんなシナリオが追加されていたのかな？
それとも独自に書いたものなのかは不明ですが名作です。*1
ともあれ『【カスケ】ノスタルジア１９０７【イリューシャ】』のスレッドは名台詞揃いなので毎日でもアクセスを！

*1:途中の206で新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)の劣化コピーだ！ってあるけど、そうなのかな？