自由道は燃えているか!?「第4話」

スパイVSスパイ (SEGA版)

タフでなければ生きてはいけない
R・チャンドラー


第四話
脱出のチャンスは一度
最近のゲームで例えるなら、格闘ゲーム。それも対戦モノ。
ゲームの面白さは、なんと言っても対人戦で相手を打ち負かす事。
コンピューターでは及びもしない、あらゆる手段で襲い掛かってくる相手を
如何にして打ち負かすかを考えるスリルとサスペンス。
「勝利こそ、生き残る事の唯一の手段」
と言っていい程の、手に汗握る緊張感にプレイヤーは時間を忘れる。


ゲームを新しく始める度に
「次はどんな作戦を立てようか」
と期待に胸を弾ませていた。
だが、最近は少々違った傾向にある。

「相手の行動に併せて、いくつかの決まったパターンを繰り返す」

この、勝利の為の方程式といった感じの遊び方が増えている。
その遊び方は、己を鍛えて相手に負けない最強の自分を演出するには
1番有効な遊び方だが、勝利の方程式は自分で発見するのではなく
雑誌などで詳しい解説をしてもらわなくては、到底分らない事柄が多すぎる。


そうした結果、この世界で生き残るには、あらゆる情報を手に入れ
自分に合う方法を身に付けた者達だけが生き残れる過酷な世界に出来上がってしまった
「タフでなければ生き残れない」
ゲーム素人には、厳しい時代になってきた。


 そんな時代が来る前には、ほとんどルールなんてものを知らなくても
数回遊べば、大体の事は理解できた。
今回の主役の男たちの戦いも単純だった。

スパイVSスパイ

相手居場所を見付けて、ただ殴りあうのも良し。
先に武器を発見してからトドメをさしに行っても良し。
相手を上手くトラップに追い込むのも良し。
色々な方法で相手が倒せるが、それがこのゲームの本当の目的ではなかった。
このゲームでは、とある建物の内にある秘密書類などを捜し出し
建物から脱出して国外へ逃亡する、というスパイ物の王道をいっている。
正に、ハードボイルドの極みのゲームである。
このゲームは、最初の建物は小さくてドコにナニがあるかは全て記憶できていた。
だが次第に大きくなる建物に、プレイヤーの記憶力は負い付かなくなる。
相手を倒す為に仕掛けたワナに、自分が引っかかるなんて事が良く起こる。
だからといって、このゲームが「不親切でツマラナイ」と言ってはいけない
このゲームの本質は、相手を打ち負かす事が目的ではなく
相手より先に脱出する事が重要なのである。
いかに華麗優雅に、そして巧みに相手を出し抜いて
極秘任務を達成する!その一点が他のゲームと、この「スパイVSスパイ」の違いだ。
相手に厳しくすると、自分にも厳しくなる。
ワナは相手を倒す為ではなく、足止めさせる為だけに抑えておいた方が良い。


格闘家とスパイの違いは、相手に対しての接し方だ。
徹底的に相手を打ちのめす「力」こそ重要な格闘家。
「力」を上手く使いこなし相手を釘付けして、サラリと抜け出すスパイ。
求めるものが「究極の力」なのか「生き延びる力」なのかの違い。


ある作家はこんな事を言っている。


優しくないと生きる資格はない
R・チャンドラー


以上『日刊ゲームスクウェア』 2001/07/07号より
前回までの『自由道は燃えているか!?』はコチラで読めます。


8月は忙しかったので、大慌てで更新しております。
レイモンドチャンドラーの本は面白いので是非一読を!*1
なお、スパイVSスパイは携帯電話でのゲームとしてリメイクされている模様。
ニュース記事
お暇な方は、遊んでみてはどうですか。

*1:実は読んだ事無いけどね…