自由道は燃えているか!?「第3話」

まだ近所で好評稼動中

この梅雨時になると思い出すことがある。
TVや新聞で食中毒のニュースを聞くたびに
アイツの顔が脳裏によぎる。


第三話『さらば愛しき不良
アイツは凄いヤツだった。そう、ワルで不良で手におえないヤツだった。
喧嘩は一流で、我々をその動きでトリコにした。


ヤツの名は『くにおくん
デビュー作は、骨太のアクションゲームで、ゲーセンでは好評を得ていたが
その時点ではあまり、世間に名前を覚えられている存在ではなかった。
アイツが輝き始めたのは、スポーツを始めてからだった。
熱血高校ドッジボール部
食中毒に倒れた部員たちの代わりに、くにお君ら不良グループが応援に駆けつけて
見事チームを勝利に導く、という内容のゲーム。


このゲームをきっかけに、くにお君はお茶の間の人気者に変貌した。
ファンティングスピリッツに溢れた行動は、それまでのスポーツ常識を
ことごとく打ち砕き、TVゲームの面白味を存分に味あわせてくれる
代表作品というまで上りつめた。
そしてスポーツゲーム業界の革命児となった、くにお君の活動を見てみよう。


子供の頃、誰でもドッジボールぐらいは知っていた。詳しく公式ルールは知らなくとも
2チームに分かれて内野の選手にボールを当てて、全員をアウトにすれば勝ち。
それぐらいは、小学生にとっては常識だったし、休み時間にはもっとルールを簡単にした
「はさみ虫」タイプのドッジボールでよく遊んだものだ。


つまり子供にはお馴染みの遊びで、上手い下手があもり関係なく
全員一緒に遊べるスポーツだったので、野球やサッカーを知らなくても
ドッジボールのルール(遊び方)だけは、なんとなく判る人はいた。
その「なんとなく判る人」向けに、ルールを改定したゲームが
「くにお君のドッジボール部」だった。
もう、このゲームに関してはドッジボールを知らない人にも出来るゲームだ。


内容は至って簡単。相手チームの足腰が立たなくなるまでひたすらボールをぶつけ続ける。
ただ、それだけだった。
この「足腰が立たない」を表わす為に体力ゲージを導入し
「こんな無茶な行為は普通の人では無理だろう」
という事で主役には「何でもアリ」の不良くにお君が抜擢された。


その結果、ドッジボールの最大の魅力である
「ボールを受けて、ボールを投げる」
この行為のみが重要となり、ゲーム(遊び)そのもの面白味が十分に表現できた
最高の作品に仕上がった。それ以来、くにお君は色々なゲーム(スポーツ)に出演し
そのスポーツの面白さの本質を、ゲームで存分にアピールしてきた。
ゲームやスポーツは「勝つ」事が重要と思われている中
くにお君は、勝ち負けとは関係なくゲームで遊ぶこと自体が面白くなくてはダメだ。
と教えてくれた。まるでオリンピックの
参加することに意義がある」と同じような事を言っているみたいだ。


あらゆる、スポーツや競技がゲーム化されているがそのスポーツの雰囲気を味わえる
ゲームを作る事が殆どだ。
元のスポーツより面白いゲームを創るにはある程度のルールを捨てて
そのスポーツの魅力を引き立てる何かを、重点的にクローズアップさせるしかないだろう。


その為には、ルール破りの無法者のアイツに帰って来て欲しくなる。
この梅雨時、食中毒のニュースが流れる度に
どこかでアイツがピンチヒッターとして活躍しているのでは?という思いに駆られる。
アイツは今、何処で何をしているのか。


「さらば愛しき不良」


以上『日刊ゲームスクウェア』 2001/06/30号より
前回までの『自由道は燃えているか!?』はコチラで読めます。


この自由道は燃えているかを掲載に踏み切ったのは
くにおくんGBAで復活した事が、最大のきっかけです。
このゲームが毎日手元で遊べる日が、この夏来ます!
みなさんも、是非お買い求め下さい。