フェイク・ドキュメンタリー

ずっこけクルーゾー警部

書こう書こうと思っていたけど、タイミングが合わなかった、映画を本日発表
ライフ・イズ・コメディー〜ピーター・セラーズの愛し方〜』を映画の日に観に行きました。
有名人の伝記映画が、次々と発表されているけど
その中でもピカイチの出来きですよ。
まぁ『ビヨンド・ザ・シー』も『レイ』も見ていないので
どちらが良いかは比較できませんけど
ライフイズ〜の方が色んな手法を使った実験映画の雰囲気が出ていて
ピーターセラーズを知らなくても、次第に映画の世界に引き込まれていく演出は凄い!
この「ライフ・イズ・コメディー」の演出の見事さは監督の手腕のおかげ。
全世界で、TVドラマブームを巻き起こした『24』の第一シーズンの監督を務めた
ティーブン・ホプキンスが、この映画を新しい伝記映画に仕上げています。
「24」では、画面の右下にタイム表示をさせて、リアルタイム感を出し
今までに無いリアルさを出したドラマに成功!
イデア一つで、ドラマに真実味を持たせる事が出来るのを知った監督が挑む
次なるステージが「ライフ・イズ・コメディー」です。


自伝映画の場合、大抵の場合は実在の主人公は死んでいるので
演技の上手い人が、その人になりきって、人生を演じあげます。
TV業界でも、たまに自伝ドラマや実際に起きた事件事故の検証番組などがあります。
その時に使用される映像に「再現ドラマ」があります。
この「再現ドラマ」をゴージャスにしたのが「ライフ・イズ・コメディー」でした。
具体的に、どういった手法を使っているのかと説明すると
再現ドラマの場合は、ドラマを最初から最後まで一気に見せるのではなく
そのドラマの要所要所に、実際に事件に関わった人のインタビューが
挿入される事が多々有ります。
そうする事によって、再現ドラマの演技が

これはドラマではなくて真実だ!

という印象を、視聴者に与えます。
この手法を「ライフ・イズ・コメディー」では「ファイク・ドキュメンタリースタイル」と呼んで
観客に「ピーター・セラーズ本人が、このドラマに出演してる」と思わせてしまいます。
具体的に、どういった演出かと言えば
映画に出演したいる脇役たちが、映画の途中で突然フレームから飛び出します。
ピーターの父親が、キッチンへクッキーを取りに行くシーンでそれは起こります。

ピーター父が、キッチンへの扉を開けると
そこには、照明さんや音声さんが仕事をしている
映画の舞台裏に来てしまいます。
そしてピーター父は唐突に語ります。
「息子のピーターは、実はこういうヤツなんだよ」

この現象が起きた時に、観客は少し戸惑いますが
やがてこのシーンこそが、本当の現実を描いているのでは?
と、不思議な気持ちになります。
現実とドラマを行ったり来たりする演出によって
TVの再現ドラマになれた観客の脳は
ピーターセラーズ本人が出演している映画なんだ。と錯覚を覚えてしまいます。
こんな見事で斬新な演出は初めてだ!
何か新しい感性を求める人には、非常にオススメの一本です。


あと上映前に、ココリコの田中さん主演の短編ドラマがあります。
これが今ひとつ…
もっと真剣にクルーゾー警部を演じきれば良いのに
田中さん風に、ちょっとハニかみながらのキレの悪い演技をしています。
クルーゾー警部が笑ったら、ギャグの意味が無くなる。
真面目な顔をしながら、トンでも無い事をするのが笑いの基本なのに。
そういう意味では「オースティンパワーズデラックス」の前に上映された
藤井隆主演の超大作「フォースティンパワーズ」の方がキレがあって笑えた。
本編に出てくるので探して下さい!(嘘です)
田中直樹も、全てを捨ててクルーゾー警部になりきれば良かったのに…
笑いのネタ的には良かったですがハジけ度が足りませぬ。
田中直樹を使った『逆境ナイン』は面白いのか?
演技出来ない男なのじゃないのか。ひょっとして。