自由道は燃えているか!?「第19話」

ハイブリッド・フロント(c)セガ

「PETOだろうが、コクーンだろうがドンッと来い!ってね」
「よしてよ、本当に来たらどうするのさ」
「きまってらぁな。ガツンッと、やってやるのさ。」
スカラベに、ってな。」
スカラベに、だ!」

第19話 続・ハイブリッドフロント
『どちらが勝つか三つ巴

シミュレーションゲームと言っても、いくつかのタイプがある。

  1. 現実の出来事をシミュレートするゲーム。
    シム・シティーアクアゾーン、競馬モノなど。
  2. 過去の合戦モノ
    三国志信長の野望などのコーエーお得意のシリーズ。
  3. 近代戦争モノ
    大戦略ファミコンウォーズなどの、戦車や飛行機でドンパチするもの。



1・2の事は、他の機会に話すとしよう。
3の近代戦争モノについて、今回は語ろうと思う。


この戦争モノにも、二つの種類がある。
ベーシックな作品が、ファミコンウォーズみたいな戦争モノ。
そこから派生したのがS・RPGの先駆けがファイヤーエンブレムだ。
 この二つは、見た目は同じだが、システムは大きく違う。
どちらも、マスの目に置かれたキャラクターを操作して
相手を打ち負かすゲームだが、片方は戦車、もう一方は騎馬で戦いに挑む。
ファンタジーか、リアルか、その事でゲームが違うのは、誰でも分かるが
システム面でも大きく違う事は、やってみないと判らない。
それでは、どこが違うかと言うと「囲碁」と「将棋」ぐらい違う。
囲碁と将棋も、マス目にコマを並べて競い合うゲームだが
それぞれ、違ったゲームに仕上っている。
囲碁は、文字通り「囲む」ゲーム。自分の陣地を拡げていくゲームです。
そういった意味で、ファミコンウォーズは、囲碁系のゲームでしょう。
そして将棋は、相手の王を獲ったら勝ち、というゲーム。
ファイヤーエンブレムは、将棋の様に、相手の王を獲っていくゲームです。
シミュレーションを、この囲碁・将棋で考えてみると
二つのゲームは、全く違った考え方(システム)のゲームである事を
理解してもらえるだろうか。
この「シミュレーション」と言う言葉で、損をしたゲームがある。
それが今回の「ハイブリッドフロント」である。


このハイブリッドフロント(以下H・F)は、発売当時の謳い文句は
大戦略を創ったスタッフが放つ、未来戦争シミュレーション」
パッケージには、戦車に飛行機、そして未来っぽく頭からケーブルを
接続している男が銃を構えている画面です。
コレだけの素材が、前面に押し出されると一般人は手を出しません。

「ファイヤーエンブレムと、ファミコンウォーズどちらが欲しい?」
と、尋ねると90%以上は「ファイヤーエンブレム」でしょう

そういった中、発売されたH・Bは、たいして売れず、ひっそりと時代の影に
消えて行ったのです。だが、ココで声を「」にして言いましょう。
このゲームは、面白い」そして
「このゲームは、囲碁ではなく将棋タイプのゲームである」と。
H・Bは、戦車+大戦略のスタッフで、完全に囲碁タイプのゲームであると
イメージが付いてありますが、実際は将棋タイプで、ファイヤーエンブレムに近いゲームです。
システム的には、大戦略の1部隊10人編成が廃止されて
ファイヤーエンブレムの、1部隊がヒットポイント制になり
ドコにいてもHPを回復する事ができてゲームを楽しみ易くなっています。
これにより、初心者でも入り込みやすいゲームシステムで
ゲームに詰まらずに、ストーリーを堪能できます。
 さらにH・Bは、従来の敵を倒すゲームではありません。
基本的に、主人公は追われる身で、押し寄せる大群から
いかに逃げ切れるかがポイントのゲームです。
敵を全滅させようとすると、スゴク難しいゲームバランスなので
それを目的に買った大戦略好きから、あまり褒められなかったのも
売れなかった一因かもしれません…


H・Bで主人公の運び屋グループスカラベの、タクラマカン砂漠から
始まった冒険は、地球から逃げ延び、宇宙の果てまで行かないが
火星の真っ赤の砂の上で、物語の終焉を迎えます。
赤い火星の砂は、戦いの星マルスによって血を吸った砂の色だった。
そして、最後に名もないスカラベ兵士がこんなセリフを言います。

「ついに、ココまで来ちまったな」
どこまででも、ついて行きますぜ!アネさん

このラストシーンまでゲームを進めて、プレイヤーは初めて

このゲームは、固有名詞キャラを操ってゲームを楽しんでいたのではない。
スカラベヘイシの一員として、この物語の一端に協力していたんだ!

と気付きます。
そんな熱く濃いスカラベメンバーと一緒に過ごした時間も残り僅か。
大群で押し寄せてくるコクーンとPETOを追い返さなければ、生き残る手立ては無い。
アネさんの為なら、これぐらいの敵引き付けて見せまさぁ
そんな気持ちがプレイヤーの中から、ふつふつと沸き起こってくる。
そこでプレイヤーは気付く。
ゲームの序盤で、敵の戦艦に突っ込んで撃破された車両の存在を。
その存在と同じ気持ちになっている自分に気付く!
ニクイ演出てんこ盛りのH・Bには、このラストステージが見せ場ばかり。
全ての敵の断末魔は格好良過ぎ。
来る日には、敵キャラのセリフ表を完成させて一気に公開したいぐらい

この傷でドコへ逃げろと言うのかね…

THANK YOU FOR READING

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以上『日刊ゲームスクウェア』 2002/01/21号より
前回までの『自由道は燃えているか!?』はコチラで読めます。


珍しくゲームの事を懇切丁寧に書こうとしている回です。
この原稿を読んで、一人でもゲームに興味を持ってくれれば!
と思い遊びやすいゲームという事を伝えようという気持ちが、はたして届いたのか?
まぁ届いたとしても、今さらメガドライブのゲームを買う人は居ないと思うけど…
ハイブリッドフロントのCD化』が出た時に、名言集が掲載できるように
今からコツコツとメモりながら、ゲームをクリアしようと思います。